膵膜房細胞の酸素消費については、酸素電極にレコーダを接続した実験装置により、連続的に記録することができるようになった。ただし、膵腺房の酸素消費率は比較的低いために、細胞密度の高い腺房懸濁液を用いる必要があった。腺房からの酵素分泌を、高用量の刺激物質で促進したときには、酸素消費の増大が認められたが、その増大の程度は僅かであった。細胞外液へのCaイオンの過剰な添加は酸素消費に変化をもたらさなかった。また、酸素消費速度の細胞外Caイオンへの依存性については、明らかにするには至らなかった。これは、酸素消費率の変化がごく僅かであったためである。 膵腺房細胞にミトコンドリア内膜のポテンシャルローブであるRhodamine123(Rh)を負荷したところ、核周囲と、核の腺腔側に蛍光が強く分布することから、ミトコンドリアがその部分に局在することが確かめられた。Rhの540nmにおける蛍光強度は、細胞外液へのハイドロサルファイト(S_2O_4)添加による低酸素処置では増大した。このことは、ミトコンドリア内膜が脱分極したこと示すが、しかし、窒素ガス通気した細胞外液による低酸素処置ではRh蛍光にほとんど変化が見られないことから、S_2O_4の直接の効果とも疑われ、検討中である。一方、酸化還元状態の指標であるNAD(P)H蛍光については、窒素ガス通気では蛍光強度は上昇したものの、S_2O_4の添加によっては蛍光強度は大きく減少し、S_2O_4の添加は低酸素処置とは矛盾した結果をもたらした。高用量の分泌刺激によってはNAD(P)H蛍光の増大が認められたが、この現象が、酸素供給不足によるものなのか、呼吸基質の酸化が促進したことによるものかは確かめられなかった。 膵臓小葉を使っての蛍光プローブ負荷については、種々の条件について検討を続けているが小葉内の細胞にまで負荷することが困難であり、十分な知見を得るに至っていない。
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