研究概要 |
Na^+チャネルは種を越え神経細胞の内因的電気特性を決定する機能素子の一つである。原索動物ホヤ幼生は発生及び体制が脊椎動物と酷似する上に神経細胞が100個以下の簡素な神経系を有し,複雑な神経系でのNa^+チャネルの多様性制御を解析するモデル系となる。今年度の解析で明らかになった事実として,1.チャネル遺伝子TuNaIIに関しcDNAライブラリーのスクリーニングを行ない,リピートIIS4よりC末端側に対応するcDNAクローンを得た。その塩基配列の解析から以前にクローニングしたTuNaI遺伝子とアミノ酸配列が大きく異なり別のファミリーに属するチャネル遺伝子であることが示唆された。2.TuNaI全長のmRNAをin vitro tran scriptionにより合成し,単離した分裂抑止割球に微小注入してNa^+電流の過剰発現を試みた結果,タイプCNa^+電流の有意な増加が観察された。一方,タイプBNa^+電流の明らかな増加はこれまでの所,観察されていないが,タイプB電流は神経分化の初期に一過性にのみ増加するので,対応する分子を同定するにはTuNaII遺伝子の全長のcDNAクローニングの進行と共にタイプB電流の増加する時期(授精後40時間)での詳細な電気的計測が必要と考えられる。現在この解析を進行中である。3.whole mount in situ hybridizationによるTuNaIIの発現は,頸部神経管に位置する細胞のみに限極し,TuNaIが神経系全体に発現されているのと対照的であった。従ってTuNaII遺伝子は特定の神経細胞に固有の電気活動に必要であると予測された。今後,TuNaIIcDNA全長をクローニングを終わらせると共に2つのNa^+チャネル遺伝子の発現制御の違いを明らかにし,Na^+チャネル分子の多様性の機能的意義を明らかにしたい。
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