脳虚血部位を脳全体、中脳以上、中脳のみ、橋・延髄のみに分け、その虚血状態をマイルドな状態からシビアな状態まで変化させたときの中脳および延髄の昇圧ニューロンの反応性の相違とこれらニューロンの解剖学的線維連絡について研究し、次の結果を得た。 方法)ウレタン麻酔したウサギを、非動化し、人工呼吸下に体血圧、心拍数および中枢のニューロン活動を反映する腎交感神経活動(RNA)を記録した。a.中脳以上の脳虚血モデル、中脳虚血モデル、橋・延髄の虚血モデル、全脳虚血モデルを一匹の動物で作成し、それぞれの脳を虚血にしたときの中脳および吻側延髄の昇圧ニューロンの反応性を比較した。b.動脈系圧受容器がインタクトな場合と切除した場合についても比較した。c.中脳昇圧ニューロンの下行性線維連絡は微小ガラスピペット用い、興奮性アミノ酸の注入による昇圧反応が認められた部位にWGA-HRPを注入し、昇圧ニューロンが順行性に下位脳幹のどの部位に投射しているのか明らかにした。 結果)a.延髄が虚血になる橋・延髄の虚血モデルと全脳虚血モデルでは脳への血流が4ml/min以下で昇圧反応ならびにRNAの増加が認められ、さらに急激に血流を遮断すると直後から虚血性反応が現われた。一方、中脳以上の脳虚血モデル、中脳虚血モデルでは脳への血流が2ml/min以下で初めて昇圧反応ならびにRNAの増加が現われ、また血流を遮断した際の反応の立ち上がりも10秒以上の時間を要した。b.全ての虚血モデルに認められた虚血性の反応は動脈系圧受容器の切除によって増大またはその反応性を逆転させた。c.WGA-HRPでラベルされたaxonおよびaxon terminalが延髄昇圧ニューロンが分布している吻側延髄腹外側野に認められた。 結論)a.延髄昇圧ニューロンは中脳昇圧ニューロンより虚血に対する閾値が低いと考えられる。b.虚血によってその興奮性を増大させる延髄および中脳昇圧ニューロンに対して、動脈系圧受容器は強い抑制効果を及ぼしている。c.中脳昇圧ニューロンは下行性に吻側延髄腹外側野に直接投射し、延髄昇圧ニューロンの活動を修飾することでその機能を発現している可能性が示された。
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