高分子化合物によって赤血球が集合を起こすことはよく知られている。集合体は高分子化合物の濃度によって形成速度や大きさに差が現われてくる。我々は集合体形成物質としてデキストランT-70を用いて濃度(0〜4g/dl)に伴って集合体の形成にどのような影響があるかを次の3つの方法で観察をおこない、比較検討した。(1)単離ウサギ腸間膜に赤血球浮遊液を灌流し、微小血管の壁近くに形成される血漿層の厚みと血管内径の関係。(2)低ズリレオスコープ下における赤血球連銭形成速度。(3)赤血球集合・沈降過程におけるレーザー光透過量の変化。 【結果】低ズリレオスコープ法による集合体形成速度およびレーザー散乱光による集合体形成及び沈降速度はデキストラン濃度が2.5g/dlで最大となった。一方、単離ウサギ腸間膜の微小血管における赤血球の流動を観察すると、デキストラン濃度が増加するにつれて血漿層の厚さが増すが、増加率はデキストラン濃度が2.5g/dl付近で最も大きく、逆に2.5g/dl付近のデキストラン濃度では灌流抵抗の増加率が低いことが明らかになった。 【考察】低ズリレオスコープによる赤血球集合体形成およびレーザー散乱法による赤血球集合・沈降過程においては、ともに赤血球に加わるずり応力は低く、0〜2dyn/cm^2程度であり、デキストラン濃度変化によって赤血球集合体形成速度に変化が見られた。一方、微小血管内では血管壁に近いところではズリ応力が大きく(〉20dyn/cm^2)、赤血球は軸集中し、かつ、赤血球同士の衝突頻度が増える。中心軸付近ではズリ応力は小さいために集合体形成が促進された状態になったと考えられた。また、血漿層の厚みと灌流抵抗の増加率の変化は赤血球が集合を起こすことで循環抵抗の増加を抑えていることが考えられた。
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