研究概要 |
心筋虚血時の活動電位持続時間の短縮に対するアデノシンの効果をATP感受性カリウムチャネル(K_<ATP>チャネル)の活性化作用に注目して検討した。アデノシンはA_1受容体を介して心室筋細胞のK_<ATP>チャネルを活性化することが報告されている。これはG_i蛋白を介する反応であり、細胞内側からGTP_rSを作用させるとK_<ATP>チャネルの開口確率が増加した。従って虚血早期に増加するアデノシンがK_<ATP>チャネルを活性化して活動電位持続時間を短縮していることが示唆された。そこでモルモットの右心室摘出潅流標本を作製し、心基部を3Hzで刺激しながら標準微小電極法にて活動電位を記録し、10分虚血中の活動電位持続時間の変化を検討した。10分虚血により90%再分極時の活動電位持続時間(APD_<90>)は対照時の157±5msから92±5msへと有意に短縮した。同様の実験をA_1受容体の遮断薬である1,3-dipropyl-8-cyclopentylxanthine(DPCPX)存在下で検討したところ、APD_<90>は158±3msから98±2msへ有意に短縮したが、対照群との有意差は認められなかった。この結果から、アデノシンは虚血時の活動電位持続時間短縮にはほとんど関与していないと考えられ、チャネルレベルでの結果と矛盾する。その理由としてモルモット心室筋細胞ではアデノシンのA_1受容体が少ないことが一因として考えられた。 またIc群抗不整脈薬であるflecainideのK_<ATP>チャネルに対する作用についても検討した。モルモットの心室筋細胞を用いてinside-out patch clamp法で記録したK_<ATP>チャネル電流をflecainideは電位依存性に外向き電流のみを抑制し、その効果は細胞内アシドーシスやヌクレオシド二燐酸存在下では減弱する事が判明した。
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