ラット顎下腺からコラゲナーゼとデイスパーゼにより単一腺房細胞を調整し、それにパッチクランプ法を適用し以下の実験を行った。ホールセルパッチクランプ法を適用することにより単一細胞細胞膜全体のCa依存性Kチャネル電流を測定した。ピペット内溶液はG-glutamateを基本した溶液を用いた。溶液中の遊離Ca濃度は基本的に1uMとする。細胞外液はNMDG-glutamateを基本した溶液として膜電位固定により惹起されるK電流が得られるか否かを検討した。 このような実験条件下で得られた電流の大部分は10mMTEAにより抑制されなく、このTEA非感受性の電流を電気生理学的に検討した。TEA10mM存在下で見られた電流の逆転電位は細胞外K濃度を変化させるとほぼK選択的電極のような振舞をしたことから、K電流であることが明らかになった。このK電流がK選択的イオンチャネルを介しているか否かを調べるために、ピペット内溶液のK-glutamateをCs-、Na-、Rb-glutamateで置換して同様な実験を行った結果、CsおよびNa置換では外向き電流は膜電位過分極側では観察できなく、逆転電位は約0mVにシフトした。一方Rb置換ではKと同様な外向き電流が観察され、逆転電位もKとほぼ同様であったことから、この電流は非選択的カチオンチャネルを介したものでないことが、明らかになった。この電流はピペット内溶液の遊離Ca濃度は100nM以下にすると完全に抑制されたことから、Ca依存性Kチャネル電流であることが明らかになった。さらにこのK電流は細胞外にBa(5mM)やquinine(1mM)を投与することに抑制された。これらの研究により明らかになったTEA非感受性、Ca依存性K電流の電気生理的性質は以前報告したラット顎下腺を用いた血管側外向きKイオン輸送の性質とよく類似していることから、本研究で示されたKチャネルが生理学的に重要な役割を果たしている事が示唆される。
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