研究概要 |
本研究は動脈圧受容器-交感神経反射機能に及ぼす加齢の影響およびその安静時交感神経活動との関係を明らかにすることを目的とした.16〜80歳の異なる年齢層の健常人を対象とした. 1)マイクロニューログラフィを用いて筋交感神経活動を測定し,血圧上昇作用あるいは下降作用を有する薬物負荷により血圧を上昇または下降させた時の心拍数および筋交感神経活動の反応を観察した.その結果,動脈圧受容器-心拍数反射機能は血圧上昇時,降圧時とも加齢によって減弱した.一方,動脈圧受容器-筋交感神経反射機能は血圧上昇時,降圧時とも年齢との間に有意な相関を示さなかった.安静時交感神経活動は加齢とともに亢進したが,動脈圧受容器-交感神経反射機能との間に相関を示さなかった. 2)圧受容器は一定の血圧値に反応(steady-state response)するだけでなく,1心拍ごとに血圧の立ち上がりにも応じて反応(dynamic response)するのでバルサルバ試験を負荷した際の平均血圧の変化に対するRR間隔および筋交感神経活動面積の変化について解析した.その結果,動脈圧受容器-心拍数反射機能のsteady-state responseは老年者で減弱したが,dynamic responseは減弱していなかった.一方,動脈圧受容器-交感神経反射機能はsteady-state response,dynamic responseとも老年者でも保たれていた. 本研究により動脈圧受容器-心拍数反射機能は加齢により減弱するが,70歳以上の老年者でも動脈圧受容器-交感神経反射機能が比較的よく保たれていることが明らかとなった.また,動脈圧受容器反射機能のsteady-state responseとdynamic responseを若年者と老年者で比較すると,老年者では圧受容器反射機能のdynamic responseは心拍数反射および筋交感神経反射においてもよく保たれていることがわかった.
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