申請者らのグループは、薬物の抱合反応や発癌性物質の生体内分子への結合に関与する硫酸転移酵素(STICI)分子種の発現が、成長ホルモンや甲状腺ホルモンにより調節されていることを明らかにした。これらの調節はタンパクをコードしている遺伝子領域であるプロモーターあるいはレギュレーター領域においてトランスファクターとの結合によって行われていると推定される。したがって、今まで遺伝子の発現の調節領域の解析にはTATAボックスより5'-上流側が主に用いられてきた。しかし、最近5'-上流域だけでなく、イントロン部位や3'-非翻訳領域も関与していることが報告されている。そこで、申請者は本研究においてはST遺伝子のGHによる発現の調節機構を解明するためにまず遺伝子を単離することを試みた。ところで申請者らは、すでにヒトより他のアリル硫酸転移酵素の遺伝子の一次構造を明らかにしている。この遺伝子の構造は全長約6kbにわたって広がっていた。同じ遺伝子ファミリーに属するラットの本遺伝子もこのヒトアリル硫酸転移酵素の構造に類似していると推定された。今回申請者はラットの遺伝子を遺伝子ライブラリー用ファージベクターであるλEMBL3に構築し、これよりSTICIcDNAをプローブとして遺伝子単離をおこなった。STICI遺伝子は4つのクローンによって単離され、遺伝子のエクソン-イントロン近傍の塩基配列の解析を行った結果、これらのクローン中より第一エクソンは検出されなかった。第一エクソンを含まない本遺伝子は約20kbほどの広がりを示しており、本遺伝子は8つのエクソンによって構成されていることが推定された。またエクソン-イントロンの結合部位はGT/AGセオリーと一致していた。今後、第一エクソンを含むクローンの単離を試み、全構造を決定するとともに5'-flanking領域の塩基配列を明らかにし、その転写活性化部位についても検討を行う。
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