研究概要 |
本年度は、ニワトリ胚を用いた脊髄運動ニューロンの初代培養系、特に運動ニューロンのみの単離培養法の確立と、骨格筋粗抽出物中に含まれる運動ニューロン生存活性を示す物質の検討を行った。 ニワトリ胚脊髄運動ニューロンは、孵卵6日目から神経細胞死がおこることがわかっており、これは標的器官である骨格筋からの運動ニューロン生存因子が受け取れなかった細胞においておこると考えられている。本研究においては運動ニューロンはすべて孵卵6日目のニワトリ胚脊髄運動ニューロンを用いた。運動ニューロン単離培養法としては、Metrizamide密度勾配遠心法、SC1,Anti-LNGFR抗体を用いたPanning法などあるが、これらのうちMetrizamide密度勾配遠心法を用いた。脊髄全体の細胞のうち運動ニューロンは約10%であると考えられているが、今回Metrizamide密度勾配遠心法を用いて検討した結果、6.7±3.7%の運動ニューロンが回収できることがわかった。 また、骨格筋粗抽出物中には運動ニューロン生存活性があることがわかっている。骨格筋粗抽出物の作製を種々の緩衝液を用いて検討した結果、1%NaCl抽出、アセトン抽出、硫安抽出を連続的に行うと最も効率良く活性物質を抽出できることがわかった。さらに、この粗抽出物のゲル濾過を行うと、分子量、約40,150kDa近辺に少なくとも2つの活性のピークがあることがわかった。 これらの活性物質が低親和性NGF受容体を介して作用を発現しているのか否かを検討するために、低親和性NGF受容体のアンチセンスS-オリゴDNAを用いて発現を抑えることを現在検討中であるが、まだ結果は得られていない。さらに、他の運動ニューロンに生存因子作用がある物質(CNTF,LIF,IGF-I,FGF-5など)についても、それらの受容体のアンチセンスS-オリゴDNAによる発現の阻止による効果を検討したい。
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