ステロールによるスクアレンエポキシダーゼ(SE)遺伝子の発現調節を調べるために、まずリボ蛋白質除去血清(LPDS)を用いて培養したL929細胞からミクロソームを抽出し、ウエスタンプロティング解析を行った。その結果細胞外からのコレステロールの供給を抑制した状態においては蛋白質レベルでSEが誘導されることがわかった。さらに、L929、HeLa、Chang Liver細胞を同様にLPDSを用いて培養し、ノーザンプロティング解析を行ったところいずれの細胞でもRNAレベルにおいてSEが誘導されることが明らかになった。LPDSに加えて、HMG-CoA還元酵素やSEの阻害剤を加え細胞内合成をも抑制すると、さらに強く誘導された。逆に培地に25ハイドロキシコレステロールを加えるとこの誘導は抑制された。このことからSEは細胞内ステロールにより主にRNAレベルで調節されていることが示された。この調節機構を明らかにするために、ゲノムライヴラリーによりSE遺伝子をクローニングし、プロモータ領域の構造を決定した。また転写開始点が、我々が報告したラットcDNAの5′端より約100塩基上流に存在することを明らかにした。現在は調節領域の同定に取り組んでいる。 またコレステロール生合成系酵素群やLDL受容体の発現は酸化コレステロールによって抑制されるがコレステロールによってほとんど抑制されない。そのため酸化コレステロールが制御物質の有力な候補となっている。我々はSEが細胞内酸化コレステロール生成に関与している可能性について精製したりコンビナントSEを用いて検討した結果、SEがスクアレンからスクアレンエポキシドを生成させるばかりでなく、スクアレンエポキシドからスクアレンジエポキシドを生成することを見出した。このことはSEがジエポキシドの生成を介して酸化コレステロール生成に関与している可能性を示している。
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