研究概要 |
我々は以前にアネキシンXIが正常繊維芽細胞(SR-3Y1)で主に核内に局在していることを示したが、いわゆる核移行シグナルを有しないアネキシンXIの核移行機構を解明するうえで、PCRテクニックを用いて各種の欠失変異アネキシンXIcDNAを作成し、哺乳類培養細胞(COS-7)にトランスフェクトし、その細胞内局在がどのように変化するかを間接蛍光抗体法により検討した。 哺乳類培養細胞(COS-7)にて発現されたアネキシンXIは、主に核内に存在していたがN末端(アミノ残基3-196)の欠失変異アネキシンXIの局在は、細胞質であった。一方C末端(アミノ残基208-504)の欠失変異のそれは、核内であった。他の一連のN末端(アミノ残基3-61,61-115,115-197)の欠失変異では十分な核内移行は認められなかった。更にN末端に融合タンパクとしてアネキシンXIとともに発現させたベータガラクトシダーゼタンパクの細胞内局在を同様の方法で検討したところアネキシンXIの挙動と同一であった。 以前に報告したようにアネキシンXIには、特徴的な4回繰り返されるプロリンリッチなモチーフがN末端に存在しており、いわゆる核移行シグナルを有しない核内存在タンパクの一つであるMuMAのC末端にやはり3回繰り返されるプロリンリッチなモチーフが存在することを考慮するとこのモチーフが核移行シグナルを有しないタンパクの核内局在に重要であることが示唆された。 アネキシンXIの細胞内核移行は燐酸化により制御されていることがsrc癌遺伝子によってトランスフォームされたラット線維芽細胞(3R-3Y1)に於て示されており、確立された多くの培養細胞ではアネキシンXIは核内局在を示すにも関わらず、組織における細胞内局在は種によって異なることが報告され、アネキシンXIの細胞内局在はN末端配列認識を含んだ新しいメカニズムによって制御されている可能性を持っていると考えられる。
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