研究概要 |
本研究では、Rho低分子量G蛋白質の作用機構と活性化機構について検討した。HGFやCキナーゼを活性化するTPAにより、KB細胞では細胞膜のラッフリングが、ケラチノサイト308細胞では細胞運動がそれぞれ惹起される。この際、Rhoの活性化を阻害するRho GDIや、Rhoの機能を阻害するC3をマイクロインジェクションすることによって、RhoがHGFやTPAの下流でこれらの機能を制御していることを明らかにした。一方、MDCK細胞におけるRhoの細胞内の局在を検討したところ、静止時には、Rhoは細胞質に存在していたが、HGFやTPAを作用させると、細胞膜ラッフリングが引き起こされ、Rhoは細胞質から細胞膜ラッフリング領域へトランスロケーションした。また、細胞外Ca^<2+>を上昇させると細胞間接着が引き起こされ、Rhoは細胞間接着部位にトランスロケーションした。Swiss3T3細胞では、細胞質分裂時にRhoは収縮環にトランスロケーションした。さらに、これらの部位には、アクチンと細胞膜との結合を制御すると考えられているERMファミリー(Ezrin,Radixin,Moesin)とCD44がRhoと共に存在していることを明らかにした。したがって、RhoはERMとCD44によるアクチンと細胞膜との接着部位にトランスロケーションし、そこでERM-CD44系を介してアクチン細胞骨格の再編成に関与していると考えられる。さらに、Db1発がん遺伝子産物がRhoのGDP解離促進蛋白質としての活性を有することを明らかにし、Db1が細胞内でRhoを活性化している可能性を示した。以上、Rhoの作用機構と活性化機構の詳細がかなり明らかになり、当初の研究目的はほぼ達成することができた。
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