これまで、ヒト口腔内白血球の簡便な単離法を確立し、その活性酸素の産生の量と質を解析し、口腔内白血球が刺激物非依存性に活性酸素を産生していること、さらにその活性酸素分子種はOCLが主体であることを明かにした。また、末梢血好中球が腫瘍壊死因子(TNF-α)や顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などによりprimingされた際に並行して起こるチロシンリン酸化が未刺激の口腔内好中球にも検出され、自発性の活性酸素産生がgenisteinやherbimycin Aなどのチロシンキナーゼ阻害剤で抑制されるが、H-7やcalphostin CなどのC-キナーゼ阻害剤では抑制されないことを明らかにした。これにより本細胞が口腔内で常に活性酸素を産生することにより、生体防御作用を発現していることが示唆された。さらに、口腔内好中球からは無刺激で一酸化窒素(NO)産生が認められた。解析の結果、この産生には誘導型NO産生酵素(iNOS)の発現によることが明らかとなった。本NO産生は、種々のリン酸化酵素阻害剤の影響を受けないことにより、既に発現したiNOSはリン酸化酵素の制御を受けないことが示唆された。また、口腔内好中球は、口腔滲出時に口腔内に活性酸素の代謝制御物質などが存在すると影響を受けるが、これが口腔内の防御系にどの様な意義を有するかを解析した結果、お茶に含まれるポリフェノール類のカテキンやタ-メリックに含まれるクルクミンは、自発性活性酸素産生を低濃度で抑制することが明らかとなった。しかも、本抑制作用は、チロシンリン酸化酵素に依存しており、これまで報告されているラジカルスカベンジ作用やC-キナーゼの作用は弱いことが明らかとなった。予備実験により口腔内好中球は末梢血好中球に比べて短時間でDNA fragmentationを起こすことが示され、今後細胞寿命と活性酸素代謝との関係を解析する予定である。
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