1)ヒト好中球ならびに肝臓に存在する2種のロイコトリエンB_4ω水酸化酵素のcDNAを用いて酵素タンパク質を酵母内で大量に発現させて精製を行った。その結果、好中球の酵素はSDS-PAGE上の分子量が55KDaの低スピン型のチトクロームP-450で、還元型一酸化炭素結合差スペクトルの吸収極大は449.5nmであり、再構成系によって活発なロイコトリエンB_4ω水酸化活性を示した。一方、肝臓の酵素はSDS-PAGE上の分子量は57KDaの低スピン型のチトクロームP-450で、還元型一酸化炭素結合差スペクトルの吸収極大は450nmであったが、精製により変成し、再構成系によって十分な活性は認められなかった。また、肝臓の酵素は強いチトクロームb5要求性を示した。 2)cDNAより推定される蛋白質の一次構造より適当な配列を選び、抗ポリペプチド抗体を作成した。ヒト好中球の酵素の合成ペプチドに対する抗体を用いたウエスタンブロッティングにより55KDaにバンドが見られ、さらに免疫組織染色により好中球内に酵素の存在を確認できた。 3)ヒト好中球の酵素の遺伝子解析を行ったところ、サザンブロッティングにより少なくとも1つの類似した遺伝子が存在し、さらに肝臓の酵素に類似した遺伝子も数個存在することが示された。ヒト好中球の酵素の遺伝子の内、転写開始点を含む16KbpのゲノムDNAクローンを得、その中に9個のエクソンを確認したが全長は含まれていなかった。本クローンを解析した結果、開始コドンはエクソンII上にあり、転写開始点より上流1.1Kb以内にはCACCC結合サイトなどいくつかの転写調節因子の結合サイトが見られた。
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