小脳顆粒細胞ならびにその前駆細胞に接続的に発現している転写因子zicの神経発生において果たす役割を明らかにするために、以下の実験を進め、解析を行った。 1.相同組換えによるzic遺伝子欠失マウスの作製。まずマウス染色遺伝子中にzic遺伝子の機能を相補し得る関連遺伝子が存在するかどうかの検討を行った。その結果、すくなくとも3種類のzic関連遺伝子の存在が確認された。これらの遺伝子の発現を検討したところ、一部はzic遺伝子と共通する部位で発現しており、機能を相補し得る可能性が考えられた。これらの遺伝子をすべて、129/Sv由来の遺伝子ライブラリーより単離し、その構造決定を行った。zic遺伝子についてはDNA結合部位の大部分のを欠失させたターゲッティングヘクターを作製し、D3由来の未分化胚性幹細胞に遺伝子導入を行った。 zic発現組換えアデノウイルスベクターの作製ならびに胚、個体への局所注入。発生過程、または成熟した個体の中枢神経系に局所的にzicを発現させたときの影響をみるために、zic発現用アデノウイルスベクターを作製した。この発現ベクターを培養細胞に感染させたところ、あるレベルまで感染させたウイルス量に比例して、zic蛋白質の発現量が増大することが確認された。また、特定の培養細胞株では、Zic蛋白質の発現により、細胞分化の過程に異常がおきることが明かになった。現在、発生過程のニワトリ胚またはマウス胚に組換えウイルス液を微量注入したときの影響を検討している。
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