研究概要 |
【材料】骨髄異形成症候群(MDS)についてrefractory anemia(RA)3例、RA with excess of blasts(RAEB)7例、白血病化したRAEB5例、de novoAMIL5例、計20例の骨髄穿刺吸引組織ないし骨髄生検組織を用いた。白血病化したRAEBは白血病化の前後で同一の症例を使用し、比較した。コントロールとして正常骨髄3例を用いた。全て10%ホルマリン固定、パラフィン包埋されたもので行った。新鮮な材料を用いたbcl-2遺伝子再構成の検出については症例がうまく収集できず、data解析する段階まで行えなかった。 【材料】Apoptosis(Apo)の発現を検出するためTdT-mediated-digoxigenin nick end labeling法(ApopTag^<TM>,Oncor社)を用いて行い、bcl-2遺伝子再構成の替わりにbcl-2遺伝子蛋白の発現について抗bcl-2 oncoprotein抗体(DAKO)を用いて免疫組織化学染色を行った。 【結果】Apoならびにbcl-2蛋白の発現について作製した標本を対物100倍の油浸レンズを用い,骨髄組織中の細胞を約1,000個算定し,個々の症例における陽性率を求めた.コントロールではApo1.77±0.44(mean±SD),bcl-2蛋白0.35±0.09であり,以下同様にRA6.99±4.96,5.16±3.32,RAEB7.09±2.51,6.40±3.34,白血病化したRAEBでは白血病化の前後で3.45±2.26→0.64±0.49,12.02±5.45→27.06±13.09,de novo AMLでは0.26±0.11,39.03±11.31であった.すなわちMDS(RAとRAEB)では正常よりApoおよびbcl-2蛋白の発現が目立った.白血病化によりApoの頻度は低下し,bcl-2蛋白の発現が著明になり,de bovo AMLのレベルとほぼ同等であった.以上の結果よりApoはMDSにおける造血細胞の異形成の原因の一つと考えられ,また,無効造血の原因としても一つの役割を担っていると考えられた.また,白血病ではMDSの状態よりもApoの出現頻度は低下しており,白血病に移行したRAEB症例において,白血病化によりApoが有意に発現低下を認めている.白血病化したRAEBでは,MDSの段階で非白血病化RAEBよりも低いApo及び高いbcl-2蛋白発現を示し,白血病化の前後においても有意差を認めており,これらの因子(Apoとbcl-2蛋白発現)はMDSの白血病化の指標の一つになる可能性が考えられた.
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