【目的】本研究の目的は、組織切片中で細胞内物質(DNA)の定量を行うことを目的とした手法In situ cytofluorometryを開発することである。本研究では、従来より研究開発してきたデジタル画像解析技術を用い、レーザ顕微鏡システムから得た光学的断層像の定量性((1)蛍光減衰、(2)画像むらやノイズ、(3)光学的断層像の画質)を検討するとともに、断層像の三次元的加算を行い、組織切片中での個々の細胞のDNA定量を試みた。【材料・方法】ヒトのリンパ節および甲状腺腫瘍のパラフィン包埋組織の厚切り切片(30μm)を脱パラフィンし、RNase処理後、核DNA蛍光染色(propidium iodide)と蛍光減衰防止処理(2-mercaptoethylamine hydrochloride)を行った。この標本を共焦点レーザ顕微鏡システム(ニコン試作機RCM2000)で観察、3次元デジタル画像データ化した。このデジタル画像データを自作(Microsoft C)のコンピュータプログラムで処理し、光学的断層像の3次元的加算を行い個々の細胞核DNAを定量した。【結果】2-mercaptoethylamine hydrochlorideを用いた蛍光減衰防止処理を行うと、30秒のレーザ光連続照射でも、90%程度の蛍光減衰に止まった。また、シェ-ディングコレクションと加算入力を行うことにより、画像むらやノイズは減少し、単一光学的断層内での蛍光量の定量性が確認できた。次に、光学的断層像の3次元的加算を行う場合、標本上15μmよりも深い位置の細胞を共焦点レーザ顕微鏡で捉えると、蛍光量の減少と解像度の低下が問題となった。そのため、15μm以上の大きさの細胞核のDNA定量は不正確となった。この問題は、組織標本、封入剤、油浸レンズの油の各屈折率が異なるためにおこると考えられた。現在、組織と同じ屈折率(1.52-1.55)でかつ蛍光減衰の少ない封入剤を検討中である。
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