甲状腺専門病院である伊藤病院において、昭和54年1月から平成6年2月の間に生検、あるいは手術的に切除された甲状腺未分化癌は69例である。また、分化型の癌である乳頭癌・濾胞癌の一部に未分化癌を混じえていた、あるいは分化癌術後に未分化癌を発生した、といったanaplastic transformationを起こしたと考えられる症例は24例であった。こうした症例を用い、癌抑制遺伝子であるp53を一次抗体として免疫組織化学的染色を行ったところ、未分化癌例の約7割の症例で陽性所見が得られ、予後との相関関係が示唆された。最近では種々の悪性腫瘍でp53の変異の研究が進んでおり、単に悪性転化時における消失の有無だけでなく、個々の症例についてのpoint mutation、deletionパターンの解明が行われている。現在、分化癌と未分化癌が併存する症例のパラフィンブロックを用い、p53のhot spotであるexonを用い、その変異をPCR-SSCP法により探るべく、primerを準備中である。
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