研究概要 |
子宮平滑筋腫10例、子宮外平滑筋腫5例(胃4例、皮膚1例)、子宮平滑筋肉腫8例、子宮外平滑筋肉腫6例について解析を行った。強拡40倍10視野における核分裂数の平均は、子宮平滑筋腫で3個、子宮外平滑筋腫で0個、子宮平滑筋肉腫で10個、子宮外平滑筋肉腫で5個であった。 次に、ホルマリン固定・パラフィン包埋材料を用いて、DNAを抽出しp53遺伝子の第5,6,7,8エクソンをPCR法で増幅、増幅したPCR産物はホルムアミド色素液で10倍程度に希釈し、80℃,5分間熱処理後、濃度勾配アクリルアミドゲル(5〜20%)と銀染色法(Bio Rad社:Silver Stain Plus kit)を用いて一本鎖DNAの移動度の差(SSCP法:single strand conformation polymorphism)を調べた。結果は、子宮平滑筋腫および子宮外平滑筋腫では、今回調べたp53遺伝子エクソンの一本鎖DNAの移動度の異常は見られなかった。子宮平滑筋肉腫では、8例中3例(2例は第7エクソン、1例は第5エクソン)に異常なバンドを認めた。また、子宮外平滑筋肉腫の6例中2例に第5エクソンに異常バンドを認めた。これらの結果より、大腸上皮性腫瘍と同様に、平滑筋の腫瘍においても悪性腫瘍においてp53遺伝子の変異が認められ、また、遺伝子変異が見られたエクソンも第5、第7エクソンと大腸癌等でも変異のよく見られるコドンを含むエクソンであり、p53遺伝子の変異は平滑筋腫瘍においても悪性度と相関する変異であると思われ、p53遺伝子の特定部位の変異が各臓器における腫瘍の悪性化に重要な役割を持っていると推察される。これらエクソン中の変異コドンについては現在、直接塩基配列決定法を用いて検索中である。核分裂数との相関については明らかな相関は認められなかったが、p53タンパクが細胞周期に関与するタンパクであることと、SSCP法が偽陰性を示す事があることよりSSCP法で異常バンドが見られなかった症例についても塩基配列を検索中である。
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