【目的】大腸癌肝転移例の原発巣の"budding"像(管状、乳頭状癌胞巣の先進部で癌が間質内に個々にあるいは索状、小胞巣状に浸潤している像)と接着関連糖鎖(sLeA、sLeX)の発現を大腸癌リンパ節転移陽性で無再発例を対象として比較し、これらの因子が大腸癌肝転移に関連するかを検討した。【対象】大腸癌で同時性肝転移症例(A群)、Dukes'Cで5年以上無再発症例(B群)、それぞれ24例の原発巣【方法】上記原発巣のホルマリン固定された腫瘍最深部のパラフィン包埋標本の切片にHE染色、抗sLeA、抗sLeX抗体を用いたABC法による免疫染色を施した。"budding"像はその像を呈する細胞数の量により、免疫染色は癌巣全体の中で陽性細胞の占める割合により-、+、++、+++の4段階に分類した。さらに、"budding"像においてsLeA、sLeXの発現がともに陽性ものをA、B群間で比較した。【結果】"budding"像はA、B両群に認められたが、強陽性例はA群にのみ認められ、A群の38%を占めた。原発巣の中でsLeA、sLeX陽性細胞の占める割合はB群に比べ、A群で増加する傾向にあった。"budding"像部でsLeA、sLeXがともに陽性である例はA群で17例(70%)、B群で4例(17%)(p<0.01)であった。【結論】大腸癌原発巣の"budding"像と接着関連糖鎖(sLeA、sLeX)の発現は、肝転移と関連があり、大腸癌肝再発の予測などの臨床応用への可能性が示唆された。
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