本研究は、肝血流調節機構に対してProstaglandin E1(以下PGE1と略す)がどのように影響を及ぼすのか、犬と豚で人為的門脈血流量増大モデルを使用した実験により明きらかにした. [方法]犬と豚を用い、左大腿動脈を脱血路、脾静脈下行枝を送血路とする体外循環回路(外シャント)を作成し、流量調節可能なローラーポンプを用い、門脈血流量の増大を図った(最高12時間).門脈系への増大血流量を100ml/minとし、PGE1使用群(門脈内投与、0.5μg/kg/min)、非使用群の2群を設定、Sham operationをし門脈系へ持続送血しないものを対照とした.肝血行動態の検討とともに、持続送血開始1時間以後に肝を径時的に生検して光顕および透過電顕による検討、灌流固定した肝を用いた走査電顕による検討、さらに血管内腔面積の定量化を行なった. [結果]1)PGE1非使用群では人為的に増大させた門脈血流量を維持できず、門脈血管抵抗の増大と形態学的に犬で肝静脈枝、豚で門脈枝の収縮性変化を認めた.血管内腔面積の定量化により、各々小葉間から終末枝レベルまで全体の収縮性変化であることがわかった. 2)PGE1使用群では犬、豚ともにPGE1門脈内投与中は増大門脈血流量を維持しえた. PGE1使用中、門脈血管抵抗は増大せず、形態学的に肝内血管の収縮性変化は経度であり、PGE1非使用群に比較して内腔面積は犬の肝静脈枝で2.3倍、豚の門脈枝で1.9倍に拡大していた. 3)類洞は犬PGE1非使用群が最も障害され、豚PGE1使用群が最も保たれていた. [考察]肝血流調節の主座とする場が犬と豚で異なるが、門脈枝、類洞、肝静脈枝すべてが肝血流調節に関与する.PGE1は肝内血管のトーヌス軽減とともに類洞の形態維持に関与する.
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