私共はこれまで、コレステロール合成系の中間代謝産物の細胞増殖に及ぼす影響について研究してきた。その結果、これまで報告されているイソプレノイド化合物とは別のメバロン酸(MVA)誘導体が、増殖反応を調節している可能性が示された。そこで、このMVA誘導体について検討するために、増殖刺激とともに3HMVAを細胞に与えその可溶画分をゲル濾過したところ、分子量62kDの位置に大きなピークを認めた。3HMVAで標識後、細胞をMg存在下に破砕したときのみピークが現れ、EDTA存在下には消失した。しかし、Mg存在下に現れた放射性画分をEDTAとともにincubateしてもピークの位置に変化はなく、さらにこれをSDS処理しても同じ位置であった。従って、MVA誘導体が結合した分子が膜に結合していて、Mgにより細胞質に遊離してくるものと考えられる。次に、62kDの放射性画分をさらに精製するために陰イオン交換樹脂を用いて分画したところ、120mMNaClにて溶出される単一のピークが得られた。現在この分画をさらに精製中である。 以前の研究から上記のピークはフルオロメバロン酸(FMv)の処理で影響を受けないことがわかっている。従って、このMVA誘導体はMVA〜MVAPPのいずれかの分子であると思われる。私共は増殖因子の刺激によって活性化されるP13Kinaseが、MVA産成の阻害剤lovastatinで抑制されること、この阻害効果がMVAの添加 で回復できること、さらにFMevによって影響を受けないことを明らかにしている。このようなP13Kinaseの活性化の様は、3HMVAで標識されるピークの出現と一致することから、P13Kinaseの活性化にこのMVA誘導体が関与している可能性がある。
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