研究概要 |
1.ヒトマクロファージ細胞株のEBウィルス感染系の樹立を試みるも、成功にはいたらなかった。これら細胞株を各種分化誘導剤および各種培養細胞上清(サイトカイン)にて前処理した場合についても同様であった。 2.悪性線維性組織球腫(MFH)由来細胞株におけるEBV潜伏感染遺伝子(EBNA2,LMP1)の発現をRT-PCRにて検討したが、結果は陰性であった。 今回、ヒト肉腫細胞株におけるEBV遺伝子発現については、残念ながらnegativeな結果しか得られなかった。過去20年間、EBVの感染はB細胞特異的と考えられてきたが、近年一部のT細胞リンパ腫においても高率にEBV遺伝子が検出されることが報告されている。さらに最近、HIV感染後に発生した平滑筋肉腫、あるいは臓器移植患者に発生した平滑筋腫瘍において、クローナルに増幅されたEBV遺伝子が検出されている(New Engl.J.Med.1995;332:12-8および同誌1995;332:19-25)。 こうした知見は、非B細胞腫瘍である肉腫の発生においてもEBVが関与するかもしれないとする我々の仮定を支持するものである。今後、こうした症例の人体材料について知見の積み重ねを図るとともに、細胞株の樹立を試み、EBVによる腫瘍化機序の詳細な解析に耐える系の作製を試みたい。
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