研究概要 |
ヒト癌細胞におけるウロキナーゼ型プラスミノーゲン・アクチベータ-(uPA)及びuPAレセプター(uPAR)の発現及び局在について検討する前に、各種の培養癌細胞におけるuPAの産生を検討するため、以下のヒト培養癌細胞の培養上清及びcell lysateを収集した。直腸癌の高転移株L-10、低転移株RCM-1及びWiDr、腎細胞癌の高転移株SN12C-PM6、SN12C-MM3、低転移株SN12C及びSN12C-Clome 8、転移能未検索の腎細胞癌株MRT-1及び線維肉腫細胞株HT1080を用いた。いずれの細胞株ともuPAを産生しており、高転移株の方が低転移株に比して有意に多量のuPAを産生していた。これらの細胞株においてuPAの産生は対数増殖期に多く、増殖静止期には少なくなっており、浸潤・転移過程において癌細胞増殖の関与が示唆された。また、いずれの細胞ともPAインヒビター1(PAI-1)もしくはPAI-2を同時に産生しており、特に、MRT-1とHT1080はuPAとともに組織型PA(tPA)・PAI-1及びPAI-2のいずれも産生していた。WiDrはいずれも極少量しか産生していなかった。(結果の一部を2nd International Congress of Pathophysiology, in Kyotoにて報告した) 培養癌細胞において免疫細胞学的に、また、ヒト癌組織凍結切片上において免疫組織学的にuPA及びuPARの局在を検討すると、細胞質にび慢性に染色され、細胞膜表面への局在は未だ証明しえていない。パラフィン切片上でも明瞭な局在を証明しえなかった。今後、固定の条件・時間等を変えていく予定である。また、種々の細胞外基質中での細胞の動きに伴うuPA及びuPARの発現・局在を明らかにしたい。 uPAとuPARとの結合を阻害すると報告されているスラミンを用いて、SN12C-PM6及びClone 8における培養上清中及びcell lysate中のuPA及びPAI-2の変動を検討すると、結合阻害のみから予想される結果と違って、培養上清中のuPAは減少し、PAI-2は増加した。cell lysate中の量はほとんど変化無く、スラミンがuPAの結合を阻害するだけでなく、産生も抑制していることが明らかとなった。(Clin. Exp. Metastasis, 1995, in press)
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