BFAで処理したL-42細胞の通常電顕では、intactなゴルジ装置や小胞体は見られず、小胞状に膨らんだ構造物が多数認められた。これは壊れて拡張したゴルジ装置や小胞体と考えられた。免疫電顕では、小胞状の構造物の一部、特に細胞膜に近接した部位にACTH関連蛋白陽性像が見られた。このことから、BFA投与によりゴルジ装置から先の蛋白の移送・分泌が阻害された可能性が形態学的に示唆された。一方、BFA投与時の培地中及び細胞内のACTH関連蛋白のradioimmunoassayでは、両者共にACTH活性が見い出され、その活性は細胞内がより強かった。immunoblotでも、共にACTH関連蛋白の存在が示された。その分子量は、細胞内の蛋白に較べて培地中の蛋白がやや小さく、細胞内でプロセッシングをうけた可能性が示唆された。以上の結果から、L-42は、我々の提唱している第3の蛋白分泌経路、direct endoplasmic secretionによりACTH関連蛋白を移送・分泌していると考えられた。 同様の実験を、AtT-20を用いて行った。通常電顕では、BFA投与によりゴルジ装置や分泌顆粒は見られなくなり、L-42と同様に拡張した小胞状の構造物が目立つようになった。免疫電顕では、小胞状構造物の一部にACTH関連蛋白陽性像が認められた。radioimmunoassay及びimmunoblotを行うと、BFA投与群では細胞内にコントロールと同程度のACTH関連蛋白の存在を見い出したが、培地中にはコントロールと異なり、ごく少量のACTH関連蛋白が検出されたのみであった。その分子量は、AtT-20がconstitutive pathwayから分泌するといわれている前駆体ACTHより明らかに小さく、L-42の培地中のものに類似していた。このことは、AtT-20ではBFA投与により大部分のACTH関連蛋白の移送・分泌は阻害されるが、一部のものは本来とは別の経路で移送・分泌されている可能性を示していると考えられる。それが我々の提唱としている第3の経路か否かは、現在検討中である。
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