In vitro系におけるグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-PO)の翻訳合成系を作製し、これを用いて過酸化脂質(t-buthylhydroperoxide)および過酸化水素の翻訳レベルでのGSH-PO合成におよぼす効果を検討した。まず、当施設において既にクローニングされているグルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-PO)cDNAを用い、T3 RNA ポリメラーゼによるin vitro転写反応によりGSH-POのsenseおよびantisense RNA(ネガティブコントロール用)を大量に合成した。次に、合成したRNAと[^3H]-leucineをin vitro蛋白翻訳系に加え、GSH-PO蛋白の合成を行った。翻訳反応終了後、抗ラットGSH-PO抗体を用い、免疫沈降法によりラジオアイソトープ(RI)ラベルのGSH-POを回収し、その放射活性を測定した。その結果、GSH-PO sense RNAを用いた翻訳反応では、RIラベルのGSH-PO蛋白が得られ、また、ネガティブコントロールであるantisense RNAを用いた翻訳系では反応産物は観察されず、in vitroにおけるGSH-POの翻訳系を確立することができた。こうして作製したin vitro GSH-PO合成系にt-buthylhydroperoxideおよび過酸化水素を加え、その際のde nobo合成されたGSH-POの放射線量を何も加えていないコントロールと比較した。その結果、t-buthylhydroperoxideを加えた系では、低濃度(0-500nmoles/ml)では、合成されたGSH-POの量に変化は認められず、高濃度(1000nmoles/ml)では、阻害効果が見られた。一方、過酸化水素を加えた系では、濃度10nmoles/mlにおいて薬46%合成促進が認められた。以上の結果より、過酸化水素などの基質によるGSH-POの翻訳レベルにおける合成調節の可能性が示唆された。
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