C57BL/6とBALB/cマウスに広東住血線虫を感染させ、経時的に髄液好酸球を回収し、VLA-4(CD49d)、Mac-1(CD11b)、ICAM-1の発現の推移をFlowcytometryで調べた。両系ともに20日にピークを有する髄液好酸球の増多を認めたが、C57BL/6の方で有意に高かった。好酸球の接着分子の中で最も変化の著明なものはVLA-4であり、C57BL/6では感染後13日〜20日までBALB/cよりVLA-4陽性好酸球の比率が有意に高かった。ICAM-1陽性好酸球も感染後20日まで増加傾向にあったが、それはBALB/cで特に顕著であった。Mac-1は、ICRマウスを用いた予備実験では感染後13日以降漸増したが、C57BL/6とBALB/cでは陽性好酸球が認められるものの、感染経過に伴う著明な変化は認められなかった。次に、感染C57BL/6マウスの脳の凍結組織切片を作製し、脳脊髄膜および脳内血管内皮細胞のICAM-1、VCAM-1の発現を蛍光抗体法で調べた。VCAM-1は感染後14日〜20日のマウスにおいて、肥厚した髄膜に増生した血管に強い発現を認めたが、正常マウスの血管内皮にも明らかな反応を認めた。一方、ICAM-1の発現は血管内皮には観察期間中殆ど認められなかった。血管周囲に浸潤する細胞(殆どが好酸球)を調べたところ、VLA-4、Mac-1、ICAM-1陽性細胞で占められていた。 BALB/cの脳血管、組織の検索は現在進行中である。以上の結果から、広東住血線虫感染マウスにおける髄液好酸球集積には、好酸球上のVLA-4と血管内皮のVCAM-1を介した機構が重要な役割を果たしていると考えられる。今後、抗VLA-4抗体が髄液の好酸球集積を抑制できるか否かをin vivoの系で調べる予定である。
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