研究概要 |
蠕虫感染症においては、血清IgE濃度の上昇と好酸球の増多が宿主の反応として特徴的に観察される。この反応はIL-4,IL-5を産生するTh2タイプT細胞が選択的に活性化されることが原因と考えられる。本研究では、げっ歯類動物腸管に寄生するNippostrongylus brasiliensis(Nb)を感染させたマウスをモデルとしてTh2タイプT細胞によって認識される抗原を中心に解析を行った。Nb感染マウスでは腸間膜リンパ節細胞による寄生虫抗原特異的なIL-4産生とともにIFN-γの産生が観察された。この2種のサイトカイン産生を誘導する寄生虫抗原についてゲル濾過により分離したところIL-4は分子量40,000を中心とする画分により、IFN-γは分子量17,000を中心とする画分の抗原により産生が誘導され、異なる抗原分子がIL-4,IFN-γの産生を誘導していることが明らかになった。現在、IL-4産生を誘導する抗原を非常に高い比活性にまで精製することに成功しており、性状解析を進めている。抗原分子の精製と並行して、IL-4産生T細胞によって認識されるNb抗原遺伝子をクローニングするため、日本住血吸虫グルタチオンS-トランスフェラーゼcDNAをモデルに用いてcDNA発現系とアッセイ系の構築を行った。これによりプロテインAとの融合タンパク質を発現する大腸菌発現ベクターpRIT2T上でcDNAライブラリーを構築し、発現させた融合タンパク質をT細胞培養系に加え、培養液中に放出されるサイトカインを測定する系を確立した。現在、Nb成虫mRNAからcDNAライブラリーを作製中であり、今後、上記の方法でスクリーニングを行う予定である。
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