ハイリスクグループのスクリーニング結果は以下の通りであった。障害児施設Aでは、血清反応にて38名を検査、ELISA変法では10名が陽性、うち1名はゲル内沈降反応でも陽性と判定された。この10名の糞便検査では、3名から大腸アメーバが、1名からエンテロモナスが検出された。そこで、別棟まで対象を広げ150名を検査したところ、新たに9名が陽性と判定され、2名から小形アメーバが検出された。施設Bでは50名を検査、ELISA変法では20名が陽性、うち9名は間接赤血球凝集反応でも陽性と判定された。こちらも糞便検査で他の原虫は検出されたが、赤痢アメーバと確認された例は今のところない。以上の通り、ELISA変法によるスクリーニングで各種の原虫感染が発見されたが、肝心の赤痢アメーバは検出されなかった。これが偽陽性(交差反応)なのか真陽性(混合感染)なのかは、今後のフォローアップと実験的解析の結果を待って判断したい。 実験的解析では目立った進展はなかった。抗PHEX抗体の作成は未だ成功していない。抗CRAR抗体に関しては免疫家兎血清(ポリクローナル)が得られた。この抗体は、IgG-ELISA法でCRARに反応し、GDPでも粗抗原との間に明瞭な沈降線を形成する。イムノプロット法(IgG)では粗抗原との間に10本あまりのバンドを形成し、CRARの主成分お思われる30kDや40kDの分子も認識している。しかし、このIgG分画を採取すると、GDPの沈降線は非常に弱いものとなる。そして、これを用いたアフィニティクロマトグラフィーでの抗原収量も僅かであった(イムノプロット法でのみ検出)。この免疫血清は供雑物に対するIgM抗体を含むことが判明しており、これがGDPで明瞭な沈降線を形成したものと推定された。なおGDPの解析から、患者血清はこの共雑物に反応しないものと思われた。
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