研究概要 |
毒素原性大腸菌の産生する耐熱性エンテロトキシン(STa)は、腸管上皮細胞膜上に存在する受容体蛋白質(STaR)に特異的に結合して、ヒトや家畜に急性の下痢を引き起こす毒素である。本研究において、STaとSTaRの結合部位を明らかにする目的で、STaRの細胞外領域を構成するアミノ酸のデリーションおよびポイントミューテーションを行った。 STaRデリーション変異体は、N末端側のシグナルペプチドの後ろから下流に削った変異体10種類とC末端側の細胞膜近傍から上流に削った変異体5種類を作製した。これら15種類のSTaR変異体のSTa結合活性を調べた結果、いずれもSTa結合活性を示さなかった。そこで、STaRの細胞外領域を構成するアミノ酸をポイントミューテーションしてSTa結合に重要な部位を解析した。18種類のSTaR変異体を解析した結果、Arg136,Met138およびAsp347,Asn348を変異させた2種類のSTaR変異体が、STa結合活性を全く示さず、STa結合に重要な部位であることが示唆された。さらに、これらのSTaR変異体が発現していることを、市販のモノクローナル抗体の認識するエピトープを導入して免疫沈降にて確認した。この結果、蛋白質が発現しているにもかかわらず、Arg136,MeT138およびAsp347,Asn348を変異させた2種類のSTaR変異体はSTa結合活性を失っており、この部位がSTa結合に重要であるとわかった。
|