研究概要 |
Shigella sonnei由来の約220kbのlarge plasmidを持つ組み換え大腸菌pHW1273及びそのうちの細胞侵入性に必須の領域約26kbとその正の調節因子virFを持つ組換え体B+virFを用いてin vitroにおける細胞侵入性試験を行った。このassay系ではギムザ染色を行うため侵入時の菌体と同時に培養細胞の形態をも観察することができる。pHW1237及び野性株のS.sonneiでは侵入時の細胞形態はある時間内において正常であったが、同じ時間経過でもB+virFでは著しい形態破壊が観察された。この表現型はpHW1273にvirFを導入しても変化がなかったことからvirF単独による病原因子のup regulationではないことが推察された。従って、large plasmid上には約26kbの領域に抑制的に作用する機能が存在していて通常は標的細胞の形態破壊を引き起こさないことが考えられる。そこで、この機能を狙う遺伝子の単離を目的としてlarge plasmindの部分消化断片をpUC19に組み込み、B+virFに形質転換させることによりその表現型を抑制させるようなクローンを選択する実験を計画した。現在、細胞侵入性試験によりスクリーニングを行っている段階である。また、赤痢菌のinvasinと考えられるIpa蛋白の機能の一つとしてIpaBによるcytolysin様の活性が示唆されているが、これらIpa蛋白の統括的機能解析を行う目的でその発現および精製を試みIpaB,Dについては精製品が得られた。しかしながら、これらの蛋白の混合物あるいは単独ではcytotoxicityの発現は観察されなかった。さらに、赤痢菌の細胞侵入時に引き起こされるシグナル伝達系におけるチロシンキナーゼの関与をウエスタンブロット法により調べたが細胞侵入性の有無による細胞内タンパク質チロシンのリン酸化には差がなかった。
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