研究概要 |
PEBP2(ポリオーマウイルスエンハンサー結合因子2)は、DNA結合能を有するαと、αのDNA結合能を増強するβの二つのサブユニットからなるが、αは少なくともαA,αB,αCの三つの遺伝子があることが知られている。PEBP2αは、Tリンパ球で強く発現しおり、かつT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子等のTリンパ球特異的な発現に関与していることが知られている。又、ヒト急性骨髄性白血病(AML)でt(8;21)(q22;q22)の相互転座、及びinvl6(p13;q22)の逆位のみられる型で、転座点に位置する遺伝子が単離、報告されたが、それらは、各々マウスのPEBP2αB、PEBP2αβ遺伝子に対応することが明らかになった。すなわち、転写因子をコードするPEBP2α,β遺伝子ともにAML発症のプロトオンコジーン候補であることが明らかになり、PEBP2遺伝子は、Tリンパ球、骨髄球系の増殖、分化過程において機能していることが強く示唆された。 1.これらを解析するためにターゲティングマウスの作出を試みた。β遺伝子の第一エクソンを欠失するようにターゲティングベクターを作製しES細胞(J1)にエレクトロポレーションにて導入し、G418セレクションにて生き残ったES細胞のうち100クローンについてDNAを抽出しサザン解析を行ったが、相同組換え体は得られなかった。そこで、このDNAを鋳型としてPCRの条件設定を行った。次回は、この条件を用いたPCRにて相同組換え体の同定を行い、相同組換え体を得たいと考えている。 2.さらに、αA、αB、αCは、runt Domainと呼ばれるDNA結合領域を共通に持っているが、runt Domainのみは、転写因子αA、αB、αCに対してDominant negativeに働くことが予想される。そこでrunt Domainのトランスジェニックマウスの作出を試み、現在、マウスが誕生しつつあるところである。
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