研究概要 |
HIV-1のワクチン開発の目的で中和単クローン抗体の中和活性に関わるエピトープの決定を行った。gp120分子上のV2領域を認識する抗体からのエスケープウイルスはV2領域内の単一アミノ酸が置換した2種類の変異が認められた(Y177HとL179P)。親株への同変異の導入実験によりエスケープウイルスを作製することができた。 次に作製した3次構造で形成されるCD4結合領域を含む不連続なエピトープを認識するヒト型抗体21hの中和エスケープウイルスはC1領域(T55A)、V2領域(N167D)そしてV3領域(N295SとR306S)に変異が認められた。N295SはN結合糖鎖を欠失させる変異であり、3次構造で形成されるエピトープを認識する抗体の結合性はgp120分子全体としての立体構造に影響されると考えられた。 1)V3領域(N295SとR306S)の変異と同じ変異を親NL4-3株に導入したウイルスを作製した。変異導入ウイルスは親株よりも増殖速度が増加していた。しかし、21hの中和に対しては感受性があった。このことからC1領域とV2領域の変異が21h抗体のgp120分子に対する結合性に重要なのかもしれない。2)CD4結合領域を含む不連続なエピトープを認識する他のヒト型単クローン抗体(F91,15e)についても中和エスケープウイルスを作製した。現在、エスケープウイルスのgp120領域の塩基配列を決定中である。
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