インフルエンザウイルスHA分子の膜融合能はHA2N末に存在し、そのN末のアミノ酸配列は高度に保存されている。我々は、N末上の保存されているアミノ酸の内、特に酸性アミノ酸に着目し、酸性依存性膜融合能と酸性アミノ酸の存在との関係を明らかにするため、酸性アミノ酸を中性、あるいは、アルカリ性アミノ酸に置換した変異HAを作製した。その膜融合能をin vivoで解析した結果、HAによる酸性依存性膜融合能とN末に存在する酸性アミノ酸との間には、直接的な関連性が無いことが明らかになった。そこで、本研究では、HA2N末の酸性アミノ酸が高度に保存されることが、in vitroでの膜融合能あるいは、他の機能に果たす役割を明らかにするため、インフルエンザウイルス粒子の再構成系を確立を試みた。1.再構成系の確立-ウイルス粒子より蔗糖密度勾配法、セシウムクロライド密度勾配法で精製した、核蛋白質およびポリメラーゼの存在下、in vitroでRNAを合成し、活性型RNPを作製した。2.再構成ウイルスの回収-MDCK細胞にヘルパーウイルス(H3)を感染価1で感染し、1時間後に1.で合成したRNPをトランスフェクションした。目的とするHIウイルスを選択的に回収するため、ヘルパーウイルス(H3)に対する抗体を用いた。その結果、PCR法ではHIウイルスが回収されていることがわかったが、量的には非常に少なく、プラーク形成後の検出は容易ではないことがわかった。そこで、現在プラークからの新たな検出法を検討中である。3.5種の変異HAに関しては、PCRを用いたsite specific mutagenesis法により変異HAcDNAを作製し、RNA合成可能な状態にある。
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