研究概要 |
まず、最近私達がクローニングした外来性マウス乳癌ウイルスのスーパー抗原MMTV(FM)のT細胞レセプターTCR Vβの特異性についてBALB/cマウスを用いて検討した。このウイルスをBALB/cマウスのFootpadに皮下投与すると、Vβ8.2^+ CD4^+ T細胞の割合が4-6日をピークに増大することがFACS及びRT-PCRにより明かになった。他のVβの割合の変化はほとんど見られなかった。また、ミルクを介した新生児期の感染によっては、Vβ8.2^+ CD4^+ T細胞のみならずVβ2^+,6^+,8.1^+,8.3^+,14^+ CD4^+ T細胞の割合が程度の差はあるが減少した。以上の結果よりこのスーパー抗原は、比較的広範なT細胞レパトアに反応性を有することが明かとなった。次に、EAEの発症実験に用いる(PL/JxSJL)F1マウスのFootpadにこのウイルスを皮下投与すると、投与5日後にはBALB/cマウスと同様にVβ8.2^+ CD4^+ T細胞の割合の著名な増大が観察された。他のVβの割合の増加はほとんど見られなかった。これらの結果より、このウイルスの投与によりEAE発症に関与するVβ8.2^+ CD4^+ T細胞を選択的に活性化できる可能性が示唆された。 そこで、塩基性ミエリン蛋白質の抗原ペプタイド(Ac1-11)を合成し、(PL/JxSJL)F1マウスに感作しEAE発症の動物実験系の確立を試みた。その結果約63%(雄約100%、雌約31%)の確率でEAEを発症させることが可能となった。まず既報(Nature365,642-644,1993)通り、EAEが発症寛解したマウスに細菌性スーパー抗原SEBを投与しEAEの誘発を試みたところ、EAEを誘発できなかった。次にウイルスを投与したが、やはりEAEを誘発できなかった。論文通りSEBによりEAEを誘発できなかった理由は不明である。そこで現在、当初の目的とは異なるが逆にこのウイルス感染によるVβ8.2^+ CD4^+ T細胞の除去によるEAE発症の阻害を目的に、ミルクを介した新生児期感染(PL/JxSJL)F1マウスを作成しEAE発症への影響について検討を試みている。
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