好中球走化因子であるインターロイキン8(IL-8)の受容体はC5a受容体やfMLP受容体同様、7つの細胞膜貫通ドメインを持つG蛋白質結合性受容体ファミリーに属する。アミノ酸レベルではヒトIL-8受容体タイプIとタイプIIは77%の相同性を有し、ヒトIL-8受容体とウサギIL-8受容体は84%の相同性を有する。この高い相同性を有する塩基配列を利用し、よく保存されている領域の塩基配列をもとに作成したプライマーを用い、マウス末梢血好中球mRNAを鋳型としてRT-PCRを行ったところ約700bpのDNAフラグメントが増幅された。次にこれをプローブとして用い、マウスIL-3依存性白血病細胞cDNAライブラリーをスクリーニングする事より7つのクローンを得たがいずれも同様の塩基配列を示した。得られたクローンは全長1873bpで359アミノ酸をコードしヒトIL-8受容体タイプIとタイプIIとそれぞれ64%、69%のホモロジーがある一方、ヒトC5aおよびfMLP受容体に対してはそれぞれ15%以下のホモロジーしか認められなかったことからこのcDNAのコードするタンパクはmIL-8Rと考えられた。 このマウスIL-8受容体をGSTとともに発現したGST fusion protien を作製し、これをウサギに免疫して坑mIL-8R抗体を得た。マウスIL-8受容体をトランスフェクションしたCHO細胞を用い、ヨードラベルしたヒトIL-8の結合を検討したところ、この抗体は特異的に結合を阻害した。さらに、骨髄中の好中球を用いてFACSを行ったところ、この抗体はIL-8受容体を発現している好中球を認識出来ることがわかった。さらに同様の骨髄好中球を用いた実験においてヨードラベルしたマウスMIP-2は、coldのマウスMIP-2にては完全に結合が阻害され、坑mIL-8R抗体を用いると約50%阻害されたが一方でヒトIL-8にては弱い結合阻害しか認めなかった。このことはIL-8はゲッシ類においてはモルモットには存在し、ラット、マウスにおいては存在しないとされているが、今回われわれが得たマウスIL-8受容体は、マウスMIP-2をリガンドの一つとしていることが明らかとなった。
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