研究概要 |
胃癌検診の費用効果分析の無作為対象試験をコンピューターシュミレーションによって行なった。コンピューターシュミレーションでは、リスクによって一人ひとりの健康状態が毎年変化するマルコフモデルを採用した。 健康状態は、健康期、前臨床期、臨床期、フォローアップ期、死亡の五期があり、これらの変化は、統計学的に推定した。受診対象は、健康期及び前臨床期の者であり、コンプライアンスは、受診が以前の受診歴に影響されないランダムモデルと、受診が以前の受診歴に100%影響されるディペンデントモデルの双方を用いた。 研究を現実に近付けるため、研究対象を1990年の40歳、50歳、60歳、70歳の日本人、それぞれ10万人とし、それらに検診プログラムを実施した。一方、コントロールをそれぞれ同数とし、全く同じバックグラウンドを持つと仮定した。胃癌の罹患率の推定には、日本人の胃癌の罹患率及び死亡率の研究を用いた。 その結果、男女とも年令が若くなるほど検診の効率が悪くなることがわかった。それはランダムモデルであってもディペンデントモデルであっても同様であった。また、ランダムモデルでの結果において、40歳代では生存年一年につき男性で6,361千円、女性で5,071千円かかることが判明した。これらの値は、胃癌の罹患率、受診率、受診モデル、感度、特異度を変えても大きな違いは認められなかった。したがって、40歳代の胃癌検診は、検診としては非常に効率が悪いことが明かとなった。検診の効率は罹患率に強く影響されるので、胃癌のように罹患率の低下が著しいものは、検診効率の再検討が必要であることが示された。
|