研究概要 |
1.メタロチオネイン合成阻害がフリーラジカル誘起物質の毒性に与えるの影響 予め硫酸亜鉛(200μmol/kg)をICR♂マウス(5W)に1回皮下投下して肝臓中のメタロチオネイン濃度を増加させることにより、四塩化炭素(0.5ml/kg)投与で認められる血漿GPT活性の上昇が著しく抑制された。しかしながら、メタロチオネイン合成阻害作用を有するプロパルジルグリシン(500μmol/kg)を硫酸亜鉛投与2日前から1日1回、3日間皮下投与することにより、硫酸亜鉛による肝臓中メタロチオネイン濃度の増加が抑制され、しかも、肝毒性(血清GPT活性の上昇)の軽減も見事に抑制されることが明らかとなった。 2.生体内でのフリーラジカル生成に応じたメタロチオネインの量的調節機構 ICR♂マウス(5W)に各種フリーラジカル誘起物質(四塩化炭素;0.3ml/kg,メナジオン;400μmol/kg,パラコート;200μmol/kg,セファロリジン;4mmol/kg,アドリアマイシン;35μmol/kg,ブレオマイシン600mg/kg)をそれぞれ1回腹腔内投与して、24時間後に組織(肝臓,腎臓,肺,心臓中メタロチオネイン濃度を測定した。その結果、四塩化炭素では肝臓,腎臓,肺,心臓、メナジオンでは肝臓、パラコートでは肝臓,肺,心臓、セファロリジンでは肝臓,腎臓、アドリアマイシンでは肝臓,心臓およびブレオマイシンでは肝臓,肺,心臓中でそれぞれコントロールに比べて有意にメタロチオネイン濃度が増加した。このように、フリーラジカル誘起物質は生体内でそれ自身がフリーラジカル除去作用を有するメタロチオネインの合成を誘導することが明らかとなった。 3.カラゲニン足浮腫に対するメタロチオネインの抑制効果 ICR♂マウス(5W)にメタロチオネイン(2.0mg/kg)をカラゲニン投与直前に尾静脈内投与することによって、カラゲニン(1w/v%,20μl/mouse)右後肢足蹠皮下投与で認められる足浮腫の発生が著しく抑制されることが見出された。フリーラジカルの産生が炎症の発現に関与していることから、このような現象はメタロチオネインがカラゲニンによって産生されたフリーラジカルを除去したためと考えられる。 以上のように、生体内において、メタロチオネインは量的調節の可能なフリーラジカル除去因子として重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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