吸入用曝露チャンバーを用いて、体重約115gのWistar系ラット(雄)を紙巻タバコ副流煙に曝露(ロングピ-ス20本/20日、5日/週、4週間)した。このラットを気管支肺胞洗浄し、肺胞マクロファージを採取して濃度調整(2.5×10^5cells/ml)し、4種類の人造鉱物繊維と3種類の天然鉱物繊維(終濃度50μg/ml)をin vitroにて曝露した。24時間培養した後、遠沈後上清を採取して冷凍保存した(-40℃)。この上清につき、L929腫瘍細胞を用いるバイオアッセイ法によりTNF活性を測定した。繊維の暴露がないコントロール(NO)と比べて、すべての繊維状物質でタバコ曝露群でコントロール群と比べてTNF産生が少ない傾向がみられた。繊維に対するTNF産生は、コントロール群でチタン酸カリウムウイスカ≒UICCクロシドライト>UICCクリソタイル≒グラスファイバー>エリオナイト>セラミックファイバー≒硫酸マグネシウムウイスカの順であった。一方曝露群ではチタン酸カリウムウイスカ>グラスファイバー≒UICCクリソタイル>セラミックファイバー≒UICCクロシドライト≒硫酸マグネシウムウイスカの順であった。また、同時に定量したβ-グルクロニダーゼ活性では、コントロール群でチタン酸カリウムウイスカ≒UICCクリソタイル>UICCクロシドライト>グラスファイバーの順に対照と比べて有意(p<0.01)に高く、セラミックファイバ、硫酸マグネシウムウイスカ、エリオナイトでは対照と比較して差はなかった。曝露群では、TNF産生と同様にほとんどの繊維において低い傾向がみられ、有意な差が認められた。しかしその活性の順序にはタバコ曝露の影響は殆ど認められなかった。セラミックファイバーではタバコによる影響はみられなかった。これらの結果から、一カ月タバコを曝露させると肺胞マクロファージの活性および機能が低下することが推測された。しかしながら、タバコの影響をin vitroで繊維の種類による違いを調べることは、新規に開発される繊維の生体影響を予測する上で重要であると考えられる。
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