昭和63年の生活習慣に関するベースライン調査に回答した60歳以上(当時)の涌谷町民2266名に対し、平成6年に日常生活動作・手段的日常生活動作・重労働などの遂行能力を調査した。これらすべてに自立している者を「健全な老化」と定義し、何らかの障害ある者との間で昭和63年時点の生活習慣を比較することにより、健全な老化を促進する生活習慣を明らかにすることを試みた。この6年間で294名(13%)が死亡し、49名(2%)が町外へ転出した。追跡できた1923名のうち1755名(91%)から回答を得た。回答者のうち上記の質問に記入もれのあった者を除外し、分析可能であった1528名のうち、「健全な老化」を果たしている者は576名(38%)いた。 年齢の影響を調整した多重ロジスティック回帰分析では、健全な老化に関するオッズ比(95%信頼区間)は、男性:3.9(2.6--5.9)、成人病のないこと:2.0(1.5--2.7)、検診受診:1.2(0.9--1.6)、週3時間以上の運動:1.7(1.3--2.3)、7〜8時間の睡眠:1.3(1.0--1.7)、肥満でないこと:1.5(1.0--2.2)、1日3合未満の飲酒:1.6(1.0--2.5)、非喫煙:1.9(1.3--3.0)であった。男性は女性より死亡率が高い反面、生存者では健全な者が多かった。健全な老化を促進する生活習慣とは、成人病に罹患していないこと、活発な運動習慣、適度な睡眠、肥満していないこと、適度な飲酒習慣、喫煙しないことであった。 生存者と死亡者との間で同様の分析をしたところ、生存に関するオッズ比は性を除けば健全な老化の結果と同じ傾向を示したが、運動習慣と非喫煙の値は生存よりも健全な老化で著しく高かった。すなわち、これらの生活習慣は生存を延長させるだけでなく、それ以上の影響力で健全な老化を促進させるものであった。
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