研究概要 |
加齢による女性の脂質代謝の変化に及ぼす運動の影響を検討することを目的に、某運動施設で運動を行うためのメディカルチェックを受診した女性に研究への協力を呼びかけた。平成7年1月までに27人が調査協力に応じ、対象者の年齢は25歳〜73歳(平均49.2±14.9歳)であった。メディカルチェックの測定項目は、問診、空腹時採血、血圧、形態測定(身長、体重、皮下脂肪厚、ウエスト・ヒップ周囲)、安静時心電図、自転車エルゴメータによる運動負荷試験であり、加えて、質問紙による生活習慣と食物摂取調査、1週間の歩数調査、月経状態の調査を行った。血液生化学検査項目は、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、アポ蛋白、リポ蛋白AI、インスリン、エストロゲン、プロゲステロン、FSH、テストステロン、フリーテストステロン、DHEA-S、SHBG,GOT,GTP、クレアチニンであった。運動負荷試験では15w/minずつ負荷が漸増する方法で自覚的亜最大まで実施し、運動中の心電図と心拍数をモニターし、血圧を1分毎に測定した。加齢に伴い体力は低下したが、体脂肪率とは関連がみられなかった。また、総コレステロール、中性脂肪、アポBは年齢と有意な正の相関を示し、閉経によりエストロゲンが低下するとこれらが増加するという従来の報告と一致していた。運動習慣のある者について加齢と血清脂質の関連をみると、運動頻度は60歳以上の高齢女性の方が週2回と、それ以下の年代よりも多かったが、総コレステロール、中性脂肪などは高齢者で高く、運動がホルモンの変動によるこれらの血清脂質の変化を緩和することは難しいと考えられた。しかし、HDLコレステロールやリポ蛋白AIは加齢による変化がみられず、加齢により低下するという報告とは異なっており、運動がHDLコレステロールの加齢による低下を緩和させた可能性が考えられた。リポ蛋白AIは加齢との関連が明らかではないが、抗動脈効果作用の高いリポ蛋白であることから、HDLコレステロールと同様に運動の影響での加齢による変化が緩和されるとすれば興味深いと考えられた。
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