I 対象と方法 対象者はこ健康診査を受診した282名のうちDNA抽出用としての血液検体が有用であった者221名(男95名、女126名)である。PGC遺伝子多型はPCR法により観察された。さらに、胃癌患者20名を加えた。 II 結果と考察 PCRで増幅されたPGC遺伝子領域は約300から約500塩基対の6種類の対立遺伝子として観察された。対立遺伝子の頻度は対立遺伝子1から対立遺伝子6までそれぞれ0.077、0.036、0.328、0.240、0.009、0.310であった。PGC遺伝子多型と血清PGI値および血清PGII値の関連については、PGC遺伝子多型は6種類の対立遺伝子からなるが、対立遺伝子6は約300塩基対と最も短く、他の対立遺伝子に比べて100から200塩基対の違いがあることからこの対立遺伝子に注目し、対立遺伝子6のホモ接合体とその他の遺伝子型の2群間で、血清ペプシノゲン値が中央値より高い値(または低い値)を示す割合に違いがあるかを調べるた。なお、血清ペプシノゲン値の中央値を年齢階級別に設定し、年齢の影響を取り除いた。血清PGI値においては対立遺伝子6のホモ接合体を有する群とその他の遺伝子型を有する群間に有意差を認めなかったが、血清PGII値においてはオッズ比が2.468で、95%信頼区間は1.044-5.832となり、対立遺伝子6のホモ接合体を有する群がその他の遺伝子型を有する群に比べて血清PGII値が高値である割合が有意に高かった。さらに、PGI/PGII比についても、オッズ比は3.178(95%CI:1.198-8.430)となり、対立遺伝子6のホモ接合体の群がその他の遺伝子型の群に比べて3.0以下となる割合が有意に高かった。胃癌患者20名についてPCG遺伝子の対立遺伝子頻度に偏りは見られなかった。 本研究で注目した対立遺伝子6は他の対立遺伝子に比べて短く、そのイントロン領域も短くなることになり、そのことが転写さらに発現に影響しているのかもしれないし、この遺伝子多型が発現の調整をつかさどる他の領域や遺伝子と連鎖している可能性もある。一方で、この遺伝子多型が胃癌発症と何らかの関連を有していることも考えられるが、本研究でも胃癌患者においてPGC遺伝子多型の頻度が特異的であるとの知見は得られていない。
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