1990年12月から1993年5月までの間に、広島県および愛媛県内の34の病・医院の産科を受診した16714人の妊婦を対象とし、妊婦検診の血清を用いてHCV抗体の測定を行い、164人(0.98%)のHCV抗体陽性妊婦をみいだした。このうち133例の妊婦について出産直前あるいは直後の血清中のHCV RNAの検出をpolymerase chain reaction(PCR)法により試み、133例中100例(75.2%)がHCVキャリアと判定された。このHCVキャリア妊婦から生まれた児のうち87例(3組の双子を含む)について生後6ヵ月の時点で採血が可能であり、このうち例(2.3%)の児の血清中にHCV RNAが検出された。 この2組に、C型慢性肝炎として診療を受けている妊婦のなかからみいだした2組の母子感染成立例を加えた計4組の感染成立例と、母子感染が成立しなかった母親47例とについて出産時の母親のHCV RNA量をbDNA assayで測定したところ、母子感染は出産時の母親のHCV RNA量が一定(5.0MEQ/ml)以上の母親から生まれた児の一部に成立していることが明らかとなった。 母子感染が成立した母親のうち2例が、その後に次の子を出産しているが、この児についても感染成立の有無を調べることが可能であった。その後に生まれた同胞においては、出産時の母親の血中HCV RNA量は同程度であるにもかかわらず、母子感染は成立していなかった。このように母子感染成立が、出産時の母親の血中HCV RNA量のみで決まるものではないことも明らかになった。
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