研究概要 |
本研究は,1993年宮崎県K町住民健康診断受診者のうち,15年前の血清が保存されていた住民を対象として,C型肝炎抗体(以下HCV抗体)検査を行い,今後のC型肝炎抗体陽性率の推移を予測することを目的として行った. 15年間の新規発症率は11名/924名/15年(0.079%/年),C型肝炎抗体陰転化率は14名/56名/15年(1.67%/年)だった. 1979〜1980年の年齢階層を1993年を形成する年齢階層と重ねてみると,現在の抗体陽性者集団を形成しているのは,15年前の既感染者であり,新規の罹患者はほとんど認められなかった. 本研究はEnzyme Immuneassay(以下EIA)法を用いて約15年前のHCV抗体検査を行ったが,ビーズ固相を用いたEIA法によるHCV抗体検査では偽陽性が顕著に出現した.これは,-20度での凍結保存や,凍結融解の繰り返しが行われたこと等により,血清蛋白が変性を引き起こし,非特異的反応を起こしたためと考えられる.変性蛋白はおそらくグロブリン系で,これがビーズ表面のHCVリコンビナント抗原と結合し,偽陽性が出現するのではないかと考えられる.その一方で,Passive hemagglutination法は偽陽性率が極めて少なく信頼性のおける結果が得られた. 現在,血液を介した感染予防対策がなされており,一方,既存の知見でも年少者のHCV抗体陽性率は,ほぼ0に近い値である事から,今後C型肝炎罹患率は減少し,ほぼ現在の感染者集団で推移すると考えられる.本研究においても,HCV抗体陽性率は減少してゆく事が実証された.しかし,現在の年少者も加齢とともに感染機会が増加する可能性があるし,今後,若年層のHCV抗体が顕性化してくる事も考えられ,陽性率が少ないとされる現在の40歳以下の集団がHCV抗体陽性率低値のまま推移するかを見守る必要があろう.
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