研究概要 |
近年骨粗鬆症の早期診断のために、骨形成を反映する血中Osteocalcin(Bone Gla Protein,BGP)や、骨吸収を反映する尿中Pyridinoline(Pyr)、Deoxypyridinoline(D-Pyr)等の骨代謝マーカーの存在が最近注目されてきている。しかし骨代謝マーカー値が骨量減少を早期に把握し得るかどうかを確認するためには一般住民を対象とした縦断調査が必要である。申請者は、骨代謝マーカー値が骨粗鬆症の早期診断の一助となり得るかを検討するために、女性の加齢にともなう骨密度変化を調べ、骨代謝マーカーがどの程度骨量の低下を反映し得るかを調査した。 対象は和歌山県美山村(人口2639人)において1988年に設定した1543人コホート集団より選んだ40-79歳の女性各年代50名、計200名である。対象者には1990年にDXA(Lunar社製DPX)を用いて骨密度調査を行った。さらに1992年の総合検診で、血清BGP、尿中Pyr、D-Pyr値を測定した。さらに3年後の追跡調査として、前回使用のDXAを用いて上記対象者の骨密度を再度測定した。 前回測定者のうち、今回経年変化を観察しえたのは185名であった。そのうち1年間で骨量が3%以上低下するいわゆるfast bone losersは18名おり、その割合は9.7%であった。次に縦断調査対象者の内、骨代謝マーカーを測定している126名について、骨代謝マーカーと骨密度変化との関連をみると、BGP値が高いものほど有意に骨密度の低下率が大きいことが分かった。 従って今回の研究で、骨代謝マーカーのなかでもBGP値は、骨量の低下を早期に診断しうる可能性が明らかとなった。
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