石川県では高校1年生を対象に標準12誘導心電図検査、血圧測定、身体測定および問診からなる学校心臓病検診が行われているが、その心電図所見に及ぼす運動、肥満、血圧の影響について検討を行った。なお、心電図はミネソタコードに準拠した中川らの判定基準を用いて判定し、運動量の指標としては中学3年間の運動部所属の有無を、肥満の指標としてはロ-レル指数を用いた。また、血圧については小児成人病プロトコールの基準値以上を高血圧とした。その結果、1)運動部群(中学3年間運動部に所属していた者)は非運動部群に比べ、男子では洞性徐脈が、女子では左右高電位が有意に多く、運動部の活動による心臓の予備力の増大が示唆された。2)肥満群(ロ-レル指数150以上)は非肥満群に比べ男子では右側高電位が少なく、T波異常が多く、肥満による胸壁の厚さの増加が心電図所見に影響していると考えられた。3)高血圧群(男子145/85mmllg以上、女子140/80mmllg以上)は非高血圧群に比べ男子では洞性頻脈が、女子ではT波異常と洞性頻脈が多く、測定時の精神的な緊張を表していると考えられた。 以上のことから、運動、肥満、高血圧が高校1年生の心電図所見に直接あるいは相互に関連し合いながら影響を与えていることが示唆された。今回は運動量の指標として運動部所属の有無を用いたが、さらに練習時間や頻度なども加え、より詳細に検討することや、対象数を増やして出現頻度の少ない不整脈とこれらの要因との関連を検討することが今後の課題である。
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