環境要因による発癌リスク評価のためのバイオマーカーとして、体液を利用したin vitroでの反応によって、体内におけるDNAのアルキル化の評価を行えないかと考え、本年度はその基礎的検討を行った。 1.DNAアルキル化の指標としたO^6-メチルデオキシグアノシン(O^6-m-dG)は、電気化学検出器によって、およそ0.5pmolまで高感度に検出できることを確認した。 2.in vitroでのDNA塩基とアルキル化剤との反応条件を明らかにするために、代表的なアルキル化剤であるN-メチル-N-ニトローN-ニトロソグアニジン(MNNG)、N-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)と2'-デオキシグアノシン(dG)を所定の温度と時間で反応させ、生成したO^6-m-dGを測定し、次の結果を得た。(1)アルキル化剤によって生成量に差がみられることを確認した。MNUにおいて常に高い生成量が得られた。(2)温度を上げる、あるいは時間を長くすると、生成量が増加することが認められた。この条件内では、いずれの場合も80℃、8時間で最も多い生成量が得られた。(3)O^6-m-dG生成量は、アルキル化剤の添加量に依存して増加した。(4)添加したアルキル化剤のモル数に対する生成したO^6-m-dGのモル数の0%は、一定の条件下では、アルキル化剤の添加量に関わらずほぼ一定であることが認められた。この割合は、質的なアルキル化能力の指標となると考えられた。 この方法を使用して、ヒトの血清中や尿中のdGアルキル化代謝物の検出を試みるために、現在、(1)喫煙者を想定したニコチンの代謝活性物質とdGとのn vitroでの反応に関する基礎的検討、(2)ヒトの尿の濃縮、精製方法の検討を進めている。
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