研究概要 |
精神障害についての国際診断分類基準DSM-III-Rと睡眠障害についてのJCIDCP診断基準案に基づいて、一般人口における不眠症状の有症率と関連要因を調査するための質問紙を開発した。すなわち、入眼困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠困難のいずれかの不眠症状が1カ月連続して週3回以上あり、そのために困っている場合を、不眠症と定義することとした。東京都板橋区の環七通り沿道において道路からの距離別に層別無作為抽出した成人女子1,254名を対象に、上記質問紙を用いて郵送法調査を実施し、716名(59%)から有効回答を得た。不眠症の有症率は、未婚者において高く、加療中疾患あり群で高い、加齢とともに高くなる傾向がみられた。道路から0-20m,20-50m,50-100mの各ゾーンでの不眠症の有症率はそれぞれ9.4,5.5,6.6%で、有意ではないが沿道で多い傾向がみられた。この傾向は、特に加療中疾患あり群で有意であったが、加療中疾患なし群で同様の傾向は認められなかった。上記調査で不眠症と判定された事例、およびこれと年齢・婚姻状況・職業の有無・加療中疾患の有無をマッチさせて選んだ対照例のうち、同意が得られた10組について、睡眠中の寝室内および家屋外の騒音測定を行った。その結果、睡眠時のLeq、L_<05>およびL_<10>(各1分値)の平均値については、不眠症例が有意に高値であった。以上より、上記方法で判定した非沿道の有症率が5-7%であること、(騒音に関する質問から誘導するのでなく)上記方法によって沿道における騒音性不眠症の存在が確認されること、などが明らかになった。上記質問紙の有効性が確かめられたことから、これを用いて前橋市・長崎市・那覇市においても沿道地域および対照地域において住民調査を実施し(対象者約3,500名)、有症率の地域差の有無、環境要因や通勤条件などとの関連の有無について引き続き検討中である。
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