本研究は、皮膚損傷特に鈍的外力の作用によって生じた出血の生活反応について、剖検および動物実験例の皮膚をホルマリン固定後、パラフィン切片を作製し、組織学的および免疫組織化学的に検索し、血液凝固因子XMa等の損傷の生前・死後の鑑別への応用を目的として行われ、以下のような成績が得られた。 1.剖検例で、その状況から明らかに生前生じたと考えられる出血のうち、出血源に近く、周囲組織を圧排あるいは破壊する程度の出血ではフィブリンおよびXMa因子を免疫組織学的に証明し得た。 2.死後変化については剖検例のうち死後2日経過したものについて、フィブリンおよびXMa因子を証明し得た。 3.抗原性の賦活性の目的で切片をオートクレーブで処理すると、各抗体に対する反応性が向上し、より明瞭な染色結果が得られた。 4.出血後、フィブリンおよびXMa因子を証明し得るまでの時間および死後変化の影響を検討するための動物実験は現在継続中で未だ結果が出ていない。 5.明らかな死後出血については、剖検症例を収集中である。 以上にように、皮膚の出血の生前・死後の鑑別にフィブリンおよび血液凝固因子XMaに対する抗体を用いた免疫組織化学の有用性が示唆された。
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