研究概要 |
本年度我々は「アポトーシスを介した滑膜細胞の分子細胞機構」に関して、本助成の援助のもと主に、以下のことを明らかにした。 (1)慢性関節リウマチ(RA)患者の滑膜細胞ではアポトーシスによる細胞死が高率に認められた。さらにアポトーシス惹起抗体であるFAS抗体に感受性であることも示した(A&R, T. Nakajimaら)。 (2)HTLV-I型関節症の滑膜細胞をその増殖能及び形態学的に明確に分類した(Clinical Immunology and Immunopathology, T. Hasunuma, T. Nakajimaら)。現在、(1)のアポトーシスを生じる滑膜細胞の分類を検討中である。 (3)滑膜細胞増殖因子としてトロンビンがその候補の1つになりうることを示した(Clinical Immunology and Immunopathology, H. Shin, T. Nakajimaら)。 (4)滑膜細胞と同様な管腔の表層の機能的細胞の1つである血管内皮及び平滑筋細胞のトロンビン受容体による情報伝達機構を明らかにした(BBRC,204,950-955,1994 T. Nakajima, et al.)。 (5)(4)を更に発展させ、血管平滑筋におけるトロンビン受容体情報伝達機構の特異的遮断薬及びアンチセンスDNAを開発した(BBRC,203,1181-1187,1994 T. Nakajima, et al)。 これらの研究結果により、RA滑膜において増殖能の亢進(トロンビンによる作用も含めて)と、アポトーシスによる細胞死という相反する現象が生じていること、さらにトロンビンによる過増殖に関しては特異的に制御可能であることを示した。 今後、これらの点を中心にRA及び慢性難治性疾患の病態解明を進め、その病因の解明、治療法の開発を総合的に展開する予定である。
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